今回はCPIと原油価格の関連性と今後の原油価格ストーリーについて記載していきます。
この記事に書いてあること
- CPIと原油価格の関連性は非常に高い。
- 原油価格の上昇シナリオ:フーシ派のサウジ施設への攻撃、アメリカの備蓄放出終了
- 原油価格の下落シナリオ:世界経済の停滞、イラン核合意
CPIと原油の関連性
CPIとは
まずは、皆さんご存じの方が多いでしょうがCPIとは何なのか、これまでの推移について見ていきます。
CPIとは日本語で消費者物価指数と言い、衣料品や食料品など約200項目の品物の価格変化を調査して指数化したものです。
下の画像は21年2月からのCPIの推移を表したグラフになります。
8月10日に発表された7月分CPIは前年比8.5%と6月分CPIの9.1%より低い結果となり、インフレのピークアウトが期待されています。
発表されたCPIの下記細目を確認するとエネルギー価格の下落が大きく寄与していることがわかります。
その他中古車やアパレル、交通サービス等もマイナスになっていますが、一番大きいのがエネルギーの下落になります。
CPIと原油の関連性
CPIとWTI原油価格の相関性は実際にどうなのかを示したものが以下のチャートです。
上のオレンジの線がWTIの価格チャート、青色の線がCPIの推移を表しております。
下の青色のグラフがWTIとCPIの相関性を表しており、上に行くほど相関性が高く、下に行くほど相関性が低くなっています。
2021年に入ってから相関性が高くなり、21年8月からは相関性が0.9~0.97(1がMAX)とほぼ横ばいになっています。
CPIの調査対象の位置項目に含まれている事もあり、相関性が高くなりやすいとも考えられますが、2019年7月~2021年までは相関性がマイナスになっていた時期もあるため、現在のCPIを見るうえで原油価格は大きな参考材料になると言えます。
原油価格の考えられる今後のシナリオ
上記ではCPIと原油価格の関係について見てきました。
ここからは原油価格の今後シナリオについて上昇シナリオと下落シナリオを見ていきたいと思います。
原油価格上昇のシナリオ
フーシ派によるサウジアラビア原油生産施設の攻撃
フーシ派によるサウジアラビア原油生産施設の攻撃が続いています。
今年の3月にもサウジアラムコの石油関連施設に攻撃が命中し、貯蔵タンク2つで火災が発生しています。
その後サウジアラビアによるフーシ派の活動拠点を空爆。
4月からは国連が仲介に入り2か月の停戦協定を結び、その後6月に2か月の延長がされています。
しかし、8月に6ヶ月の延長を国連が推進していましたが2か月の延長にとどまっており、停戦合意の履行については双方不満を抱いている状況となっています。
そのため、フーシ派とサウジアラビアの争いが再び行われた場合は原油の供給不安が一気に増し原油価格の上昇につながります。
アメリカ石油備蓄の放出終了
アメリカのバイデン政権は4月にガソリン価格を抑える目的で石油備蓄から日量100万バレルの放出を5月から半年間続ける事を決定しました。
11月に放出期限が迫っていますが、国内で問題が発生した際に対応するために保持しておく必要があるためこれ以上の放出は無いと考えられています。
また、備蓄水準が下がった事により今後は備蓄を積み増ししていく必要があるため、原油の上昇圧力につながる可能性があります。
在庫に掛かる税金
アメリカでは、今期末の在庫が前期末よりも増加すれば、法人税などが課税されます。
在庫はいずれ現金化される換金資産と考えられており、在庫の増加は現金預金の増加と同じように所得金額の増加としてカウントされるのです。
そのため、アメリカの精油会社等では期末に向けて在庫を少なくするため一時的に価格上昇圧力につながる可能性があります。
EUの燃料不足
今年の2月より始まったウクライナ侵攻に対するロシアへ経済制裁により、EU圏への天然ガスの供給が絞られています。
また、猛暑や雨不足でライン川の水位が低下しており、航行する船舶は貨物積載量を通常の半分以下に抑える必要に迫られています。
ドイツでは石炭や原油、天然ガス等の約20%程度水運で輸送しており、国内でのエネルギー不足に拍車をかける展開となっています。
こうしたEU圏内でのエネルギー不足がWTI等に影響を及ぼす可能性も出てきており、注視する必要があります。
原油価格下落のシナリオ
世界経済の景気後退による需要減
WTIが5月に114ドルを付け、その後価格が下落している理由として世界経済の景気後退懸念が考えられます。
基本的に景気後退に伴い、人々は支出を減らすため外食や旅行等を控え、その結果航空燃料やガソリンの需要が減少し、原油価格が下落するのです。
実際にGDPが2期連続マイナス成長となるテクニカルリセッションや下記チャートのように米2年債と10年債利回りの逆イールド現象が7月5日よりずっと続いています。
このような景気後退懸念は原油に取って下落圧力となります。
イラン核合意
イラン核合意は2015年にイランとアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国の6か国の間で結ばれてた国債合意です。
イランがウラン濃縮などの核開発計画を大幅に制限する代わりに、主要国がイランに対する経済制裁を解除するといったものです。
しかし、2018年にトランプ大統領が核合意を一方的に離脱しイランに対して強力な経済制裁をかけ、核合意は機能不全に陥りました。
その後バイデン政権に交代し、核合意の再生を目指す協議がスタートしました。ところがイラン側政権が反米政権へと交代した事により交渉が仕切り直しの状態になっているのです。
現状は上記のような状態となっているイラン核合意ですが、イラン側は原油の輸出を妨げている制裁を解除することが最優先課題となっています。
また、アメリカ側としても核開発競争を起こしたくないため、双方共核合意の崩壊は望んでいないのです。
このイラン核合意が無事再生され履行された場合、市場にはイラン産原油が入ってくるため、原油価格の下落圧力になると思われます。
今回はCPIと原油価格の関連性と原油価格の上昇シナリオと下落シナリオについて記載してきました。
また、次回もよろしくお願いします。
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